タイの伝統格闘技、ムエタイが、およそ二千年ぶりにローマ時代の円形闘技場でパフォーマンスを行うという歴史的な機会を得ました。舞台となったのは、イタリア・ヴェローナ市にある古代円形闘技場「ヴェローナ・アリーナ」です。このアリーナはかつて剣闘士たちが戦った場として知られており、今回のイベントは「アメージング・ムエタイ・ワールド・フェスティバル二〇二五」として開催されました。世界中から千人を超えるムエタイ選手が集結し、タイとイタリアの百五十七年におよぶ友好関係を祝うこのフェスティバルは、世界ボクシング評議会（ムエタイ）の主催、在イタリア・タイ大使館とタイ観光局の協力によって実現しました。 開会式では、スラウォン観光・スポーツ大臣が登壇し、「イタリアとタイが互いの文化を尊重し、ムエタイを友好の架け橋として活用することは非常に意義深い」と語りました。六月二十五日から二十九日まで行われたこのイベントでは、ムエタイの試合だけでなく、タイ文化紹介、審判員のトレーニング、古式ムエタイのデモンストレーション、有名選手によるムエタイ・クリニックなど、さまざまなプログラムが展開されました。特に注目を集めたのが「タイ・ヴィレッジ」の出展です。会場には、タイの伝統舞踊やシルク展、マッサージサービス、タイ料理の屋台などが並び、訪れた人々にタイ文化の魅力を存分に伝えました。このフェスティバルは、タイの“ソフトパワー”政策の一環として、ムエタイと文化観光を通じて国のイメージ向上を図るとともに、持続可能な経済価値の創出にも貢献することが期待されています。